骨粗しょう症(こつそしょうしょう)
折れてからでは遅い
骨粗しょう症は、背骨や股関節などの骨が折れてから気づかれることが多く、骨折してから治療をするのでは遅い病気です。
折れる前に治療を開始することが重要となります。
折れるまでに自覚症状は特にないものですので、一度検査をすることが重要です。
検査のタイミング
目安としては、女性なら閉経(50歳前後)以降の方、当院では60歳以降の方、やせ型の方なら50歳代でも骨密度の検査を提案しています。
男性なら70歳以降で一度検査をすることが望ましいと考えています。
検査
レントゲンのような機械を用いて骨密度を測定します。手首や踵などで検査をするケースもあります(簡易的なため)が、大事なのは股関節や背骨の骨密度です。
股関節や背骨での検査を当院では行います(手首の方が骨密度が高く、股関節や背骨では低いケースも多いため)。
骨粗しょう症と診断されれば
骨密度・骨質を改善するための治療を開始します。
背骨や股関節の骨折をきたすと歩行困難・寝たきりなどの原因となりますので、骨折の予防が重要となります。
治療をすれば骨折しなくなるというわけではありませんが、骨折の可能性を低くすることができます。
治療法はたくさんありますので、患者さんと相談しながら最適な治療法を選択していきます。
例えば
若くて(50~70歳程度)、運動能力も保たれているようなケースでは薬を使わず、食事療法や運動療法で骨密度を上昇させることを目標にします。
半年おきに骨密度の検査をしながら、投薬するかどうかなどを検討します。
ご高齢患者さんや運動療法が困難であるような方には積極的に薬を使用します。
薬も作用機序や副作用、内服方法が様々ありますので、患者さんの希望や生活動作能力などを考慮しながら薬の内容を選択します。
当院での治療法
薬は月に一回内服するだけのもの(薬品名 アレンドロン酸)、半年に一度注射(薬品名 プラリア)するもの。
重症の骨粗鬆症や骨折治癒促進を図りたいような症例では注射(薬品名 テリパラチド・フォルテオなど)を行います。
また、新規に発売された骨粗鬆症薬は月に一回注射するだけで骨粗鬆症の改善効果が強く期待できるものがあります(薬品名 イベニティ)。
また、閉経後の患者さんで、まだ骨密度が保たれている方では女性ホルモンの内服薬を処方いたします。
そういった薬のメリット・デメリットを個々の患者さんで適応を考えながら選択します。
骨粗鬆症の加療中に抜歯をされるような患者さんでは担当医にご相談ください、いくつか注意点がありますのでお話をさせていだきます。
上記の薬に加えて、活性型ビタミンD製剤は組み合わせて服用していただく予定です。
当院での治療例
Ⅰ 背骨や股関節周囲の骨折の既往のある方、骨密度測定でYAM値62%未満の方⇒イベニティの後にプラリアを引き継ぎ
Ⅱ 上記骨折の既往なく、骨密度YAM62~70%の方⇒①テリパラチドの後にプラリアorリセドロン酸 ②プラリア
Ⅲ 上記骨折の既往なく、骨密度YAM70~80%の方⇒①リセドロン酸 ②ラロキシフェン
Ⅳ 上記骨折の既往なく、骨密度YAM80%以上の方⇒運動療法+食事療法
※どの骨粗しょう症の治療中も活性型ビタミンDの内服を追加で提案させていただきます
上記の基準(2020年の段階での論文情報で作成)を基に、個々の患者さんの背景・希望などを考慮して適切な治療方針を提案させていただきます。
骨粗しょう症薬の使用する順番を間違えると効果がないばかりか、悪化することもあるので注意が必要です。
※他院で受けた骨粗しょう症の情報は、正確に教えていただきますようお願いいたします。
筋肉トレーニング
運動の大切さについてご理解を深めてもらい、薬だけでなくある程度の筋力負荷運動をやってもらうことで骨密度・質の改善をはかります。
適切な薬物療法と運動療法を組み合わせることで、相乗効果が得られます。
骨粗しょう症の患者さんには積極的に、運動療法を提案させていただきます。(リハビリのページもご覧ください)
骨密度を増加させることだけでは不十分であることが分かってきています。
簡単に言うと、良質な骨にすることも重要であるということです。
良質な骨にするには、適度な負荷バランスを与える運動や食事も意識することが必要です。
骨粗しょう症を適切に治療すれば、内科的な疾患(心臓や腎臓、肺など)の改善にとても有用であると思います。
当院に通うようになって、内科的な問題も解決したと言ってもらえるように患者さんの全体像にも気を配って診療にあたってまいりますので、よろしくお願いいたします。